音楽制作機器選びのヒント

音楽制作機器選びのヒント
20世紀のテクノロジーの発展とともに進化してきたシンセサイザー。多種多様な音色を出せるシンセサイザーによって、現在ではひとり自宅で、プロのスタジオ顔負けの高いクオリティで音楽を作ることができる時代になりました。ここでは、音楽制作機器の中心であるシンセサイザーの発展からコンピューターを駆使した「DAW(デジタルオーディオワークステーション)」に至るまでの歴史と、これから音楽制作を始める方へのヒントをお教えします。
アナログシンセサイザーの登場
電気を使ったシンセサイザーの第1号としては、20世紀の初めにタディウス・ケッヒル作のテレハーモニュームが発表されています。ただし真空管もない時代でしたので、とてつもなく大きなものだったようです。現在のシンセサイザーの基となっているのは、1960年代にトランジスターを用いてロバート・モーグ博士が開発、製品化した、電圧制御によるアナログシンセサイザーです。モジュラー方式といってパートごとに分かれていましたが、フルに組み合わせると壁一面を埋め尽くし、まるで家具のようでした。その後ICやLSI技術が導入され、省スペース、低コスト化が進み、70年代後半にはさまざまなアナログシンセサイザーが、先進的なミュージシャンの手に届けられるようになりました。しかし当時のシンセサイザーは単音(モノフォニック)しか出せないものがあったり、制御方法もメーカーごとに異なったりで、アンサンブルを奏でるには大きな壁となっていました。
MIDI(ミディ)規格って?

1982年、アメリカで行われた会議で、日本のメーカーを中心に提案されたMIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格が基本合意されました。それまでメーカーによってまちまちであった、電子楽器の制御に関する世界統一規格です。いまではあたり前のことですが、1本のケーブルでさまざまな機種/メーカーのシンセサイザーをつなぐことができ、音の高さ、長さ、強さをはじめ、多くの演奏情報を相互にやり取りできるようになったのです。1983年にはヤマハからこの規格にのっとった、デジタルシンセサイザーDX7が発表されました。それまで一般的だったアナログシンセサイザーとはまったく異なる新しい音源方式(FM音源)を搭載し、しかも16音同時発音を実現。世界中のミュージシャンに新しい時代の始まりを告げたのです。
コンピューターでできること

代表的なDAWソフト(Steinberg社製のCubaseシリーズ)
MIDI規格が導入されて期待が高まったのが、パーソナルコンピューターを使った楽曲制作/自動演奏ソフトの開発です。コンピューターとシンセサイザーがあれば、1人の音楽家のイマジネーションをそのまま自宅の机の上で具体化することができる、DTM(デスクトップミュージック)時代の幕開けでした。そして今日、コンピューターそのものの処理スピードとテクノロジーの進化により、DAW(デジタルオーディオワークステーション)システム、すなわちコンピューターを音楽の録音/編集ツールに見立てて、生楽器と電子楽器を区別することなくハードディスクに音(波形)を取り込み、録音、加工、再生するという、プロのスタジオをそのまま飲み込んだようなシステムを個人で組むことができるようになったのです。世界のトップミュージシャンは、ノートパソコンとミニキーボードで作品を作り出しています。ツアー先のホテルで、移動中の飛行機の中で、しかもそのデータがスタジオワークにそのまま使えてしまうクオリティで!
何が必要?どれがあれば便利?
初めての人が、コンピューターを中心にして音楽を作るうえで必要なもの、「あれば便利!」というものがいくつかあります。
まずはコンピューターミュージックのソフト(DAWソフト)です。できることが膨大、しかもひとつひとつが奥深い世界ですから選ぶのはなかなか難しいです。でも最近はシンセサイザーや関連機器を購入すると同梱される入門者向けのDAWソフトもあります。これから始めるのもひとつの方法です。ある程度慣れてから必要に応じてバージョンアップできるので安心です。また、入力作業に最適化されたMIDIコントローラー(キーボード)と、できればヘッドフォンではなくスピーカー(小型でも特性がフラットな「ニアフィールドモニター」とよばれるものがよいでしょう)を選んでください。さあこれで最初の一歩は踏み出せます。まずはソフトの扱いに慣れることです。
作業環境は人それぞれ
自分のやりたい音楽が見えてきたら、それぞれに特色のあるシンセサイザー、音源モジュール、サンプラー、アウトボード(エフェクター)も揃えたいところです。音源モジュールとは、シンセサイザーから鍵盤を取り除いてコンパクトにしたものです。プラグインボードとよばれるものを本体に取り付けることで音色や発音数を拡張できる機種もあるのでチェックしてみましょう。
ギターの弾き語りやボーカルがメインの人は、シンセサイザーや音源モジュールを買い足すよりも、ひとクラス上のマイクを選んでみるのもありです。録音に重きをおくならば最初はコンデンサータイプのマイクがよいでしょう。相性のいいプリアンプも併せて購入することをおすすめします。
最後に、複数の楽器やボーカルの音をまとめるためのミキサーです。ミキサーは何度も買い換えるものではないので、自分のシステム(インプット、アウトプットの数など)が見えてきてから、本当に必要なものを購入するとよいでしょう。上級を目指すなら、01Xのような、DAWソフトのフィジカルコントロールも可能なタイプを導入してみるのもおすすめです。ストレスの少ない、ワンランク上の作業環境の構築に結び付くはずです。
システム構築例 配線図